令和8年度の運用に向けた提言
市民の皆様の安全な暮らしを守るため、避けては通れない課題の一つが「スズメバチ対策」です。
これまで市が行ってきた駆除支援等の事業が令和7年度をもって廃止されることが決まり、令和7年度予算委員会では各会派から多くの質疑が交わされました。
市民の皆様から提出された陳情も、全会派一致での「趣旨了承」となり、行政の支援継続を望む声の重みが改めて浮き彫りとなりました。
事業廃止後の「令和8年度」から、私たちの街の安全はどう変わるのか。
そして、運用が始まった後に私たちが直視しなければならない「課題」とは何か。
議会での議論を踏まえ、私の考えを整理しました。

令和8年度から始まる「最低限の対応」
市が示した令和8年度以降の方針は、「持ち主が不明な建物に巣ができた場合のみ、市が撤去を行う」という、極めて限定的なスキームです。
予算委員会において、須田委員から「この方針で、年間何件程度の対応を想定しているのか」という問いに対し、市側は「令和6年度の実績や他自治体の状況を加味し、年間で7件程度を見込んでいる」と答弁しました。
「持ち主不明」という条件に絞れば、確かにこの件数に収まるのかもしれません。しかし、現実のスズメバチ被害は、持ち主が判明している場所でも、あるいは空き家のような管理の行き届かない場所でも等しく発生します。
この「7件」という想定が、市民の安全の実態に即したものになるのか、注視が必要です。
空き家対策における「部署間連携」への期待と不安
今回の制度変更に伴い、懸念されるのが「空き家」におけるスズメバチの発生です。
市は、空き家に巣が発見された場合、窓口となる「環境保全課」が「住まい暮らし政策課」と共創し、所有者へ連絡・指導を行うという体制を説明しています。
行政が部署の垣根を越えて連携し、所有者の責任を明確にしていく姿勢は、健全な都市管理の観点からも評価できる一歩です。
しかし、現場ではそれだけで解決できない事態が想定されます。
最大の問題は、「連絡を受けた所有者が、実際に動いてくれない場合」です。
空き家の所有者が遠方に住んでいたり、経済的な事情で駆除費用を捻出できなかったり、あるいは管理の重要性を理解してもらえなかったりする場合、行政による「連絡・指導」だけでは、目の前の危険を取り除くことはできません。

「権利の壁」と、地域コミュニティの限界
ここで強調したいのは、「他人の所有物に対して、近隣住民は法的に手出しができない」という現実です。
たとえ近隣の方々が「自分たちで費用を出し合ってでも駆除したい」と願ったとしても、所有者の許可なく敷地に入り、巣を撤去することは権利の侵害にあたります。
スズメバチは繁殖スピードが速く、数週間で巣は巨大化し、通学路や隣家へ危害を及ぼすようになります。
このように、所有者が対応せず、かつ第三者が介入できない「権利の壁」があるケースにおいて、地域住民の「自助」や「共助」は限界を迎えます。誰にも手が付けられないまま、危険な「空白地帯」が放置されること。
これこそが、制度の谷間に落ちる最大のリスクです。

令和8年度中に求める「実効性のある検討」
私は、令和8年度にこの新体制が始まってからこそ、市には真の実効性を検証していただきたいと考えています。
「原則として所有者が対応すべき」という方針は尊重しつつも、実際に運用がスタートすれば、必ず「連絡が取れない」「指導に応じてもらえない」といった、地域住民では解決不可能なデッドロック事例が発生するはずです。
そこで、市には令和8年度の運用期間を通じて、以下の点を検証・検討していただくことを求めます。
①「指導不調」ケースの実態把握:所有者に連絡したものの、対応に至らなかった件数やその理由を詳細に調査すること。
② 緊急介入基準の策定:通学路に面している場合や、所有者が明確に拒否した場合など、公共の安全が著しく損なわれる際の「公助」とし ての介入(代執行等を含む)のあり方を検討すること。
③ 「7件」という想定の柔軟な見直し:実態として「持ち主不明」以外のケースで行政の助けが必要な場面がどれほどあるのかを把握し、予算や体制の拡充を視野に入れること。
結論:最後に頼れる「公助」であるために
自治体には、市民の生命・財産を守るという根本的な責務があります。
他人の土地・建物という、市民が踏み込めない領域で発生した命に関わる危険。
これに対して、最後に頼れるのは行政の持つ権限と執行力しかありません。
令和8年度からの運用は、決して「廃止して終わり」ではなく、新しい安全確保の形を模索する「始まりの年」であるべきです。
現場で起きる一つひとつの事例を大切に拾い上げ、市民がなす術のない状況においては、自治体が責任を持って対応する。
そのような「真に機能する公助」の姿を、年度内の検証を通じて形にしていくことを、強く期待し、働きかけてまいります。
市民の皆様も、ぜひ現場での気づきや不安な点を私までお寄せください。
皆様の声とともに、安全な藤沢市を創り上げていきたいと考えています。
藤沢市議会議員:西川せいじ