地域移行とは何か【その背景と経緯】
部活動の地域移行とは、これまで公立の中学校で教員が実質的に担ってきた部活動を、地域のスポーツクラブなどに移行していく取り組みです。
中学校教諭の土日における平均在校時間は2時間18分で、その大半が部活動指導に費やされています。
この時間は平成18年度(1時間6分)から10年で倍増しており、教員の負担増の大きな要因となっています。
こうした教員の働き方改革の観点から、国は抜本的な制度改革に踏み切りました。
文部科学省は2020年9月に「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について」の書面で、2023年度から公立中学校での休日の部活動の地域移行をスタートすることを発表しました。
2022年12月にはスポーツ庁と文化庁が「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」を発表し、2023〜2025年度の3年間を改革推進期間と定めました。
改革推進期間においては、活動場所の確保や指導者の登録等を進めることとされており、達成時期は一律に設けず、市町村の実情に応じて可能な限り早期の実現を目指すこととされています。

地域移行が進む中で浮かび上がった「指導者管理」の空白
地域移行の推進は子どもたちのスポーツ・文化活動の充実につながる一方で、新たな課題も生まれています。
その一つが、指導者の登録・管理体制の不備です。
地域移行の過渡期において、保護者等が非公式にコーチとして部活動に関わるケースが見受けられます。
学校や教育委員会への正式な登録を経ていない、いわば「非公式指導者」です。
このような指導者について、市はどのように把握・管理しているのか。
また、指導者として活動するために必要な登録制度や資格要件は現在どのように定められているのか?
私はこの点を今議会の一般質問で取り上げます。

近隣他市で起きたハラスメント事案
この問題が単なる制度論にとどまらないことを示す、深刻な事案があります。
近隣他市において、部活動で非登録の保護者コーチによる部員へのパワーハラスメントが発生しました。
当該コーチは解任されましたが、その後も授業参観や試合会場に来訪することがあり、被害を受けた生徒が登校や試合会場に足を運べない状況が続いていると聞いています。

今議会で問う三つの論点
有償や無償のボランティアなどすべての部活動指導者(保護者・地域人材を含む)を事前登録制とし、活動開始前に審査・承認を行う仕組みの導入が必要です。登録のない指導者が子どもたちに接することのないよう、制度の網をかけることが第一歩です。
登録指導者に対して、活動開始前のハラスメント防止講習の受講を必須とすることを求めます。指導者としての自覚とコンプライアンス意識を持ってもらうことが、未然防止の要です。
部員や保護者が安心してハラスメントを相談・報告できる第三者的な窓口の設置を求めます。顔の見える地域コミュニティだからこそ、声を上げにくい構造が生まれやすい。安心して相談できる場があることが、被害の早期発見・解決につながります。
地域移行後も「最終責任」は市・教育委員会にある
地域団体やスポーツクラブに活動が移行した後も、子どもたちの安全を守る最終的な責任は市・教育委員会にあると私は考えます。
指導者によるハラスメントが発生した際、教育委員会はどのように関与し、どのような指導権限を持つのか。
その権限の根拠を制度として明確にしておかなければ、「地域に移行したから学校は関係ない」という事態を招きかねません。
また、今後の地域移行推進にあたっては、子どもの権利・安全を最優先としたガイドラインの策定が不可欠です。
制度が整わないまま移行だけが進むことのないよう、しっかりと議会の場で市の姿勢を質問していきます。

部活動の地域移行は、教員の負担軽減と子どもたちの活動充実という意義ある改革です。
しかし、その推進にあたって子どもの安全が後回しにされてはなりません。
制度の整備と子どもの権利保護を両輪として進めるよう、引き続き議会活動を通じて訴えてまいります。
藤沢市議会議員:西川せいじ