会議日:令和7年6月24日 質問・回答
学校の行事参加について
別居している実の親の学校行事参加について、質問させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
質問の背景をすこしお話させていただきますと、これまで全国の学校において、夫婦仲が悪くなった父母間での諍いがあり、同居している親が別居している親を学校から排除することを学校側に押し付け、学校側は同居親の言い分を認め、別居親を排除するように対応するケースが多発していました。
この差別行為に対しての不満に耐えられず、埼玉県の3市で国家賠償請求事件に発展したことが事実としてございます。そこで質問をさせていただきます。

夫婦間の争いにより別居している親を学校行事から排除する事に関して国家賠償請求訴訟となった事例がありますが、国家賠償請求事案の対応は、市も弁護士費用などの多額の予算外出費がかさむので、市においても、このリスクを最小化していくべきと思うが、見解をおしえてください。

教育委員会といたしましては、法に触れる行為により国家賠償請求を受けるような事案は厳に慎むべきであり、当然避けるべきであるとの認識でございます。
藤沢市の市民憲章にも「元気で働き、明るい家庭をつくりましょう」とありますように、例え離婚しても引き離されることのない親子の絆は、行政によってひきさくようなことは起こりえてはいけないと私は思っています。
その前提で、リスクを最小化して離婚後のこどもたちの自己肯定感を育んでいくために、2025年5月15日に日本維新の会の嘉田参議院議員が法務委員会で質疑後の法務省竹内民事局長の答弁を読み上げさせていただきます。
子の利益の観点から、父母の別居後や離婚後も、父母が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが重要であると考えております。
そこで、令和6年民法等の一部を改正する法律では、親権の有無や婚姻関係の有無に拘わらず、父母は子の人格を尊重してその子を養育しなければならないこと、父母は子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならないこと等を明確化することとしております。
文部科学省から答弁された通り、ご指摘の学校行事への参加者の範囲をどのように設定するかにつきましては、当該学校において判断されることでありますが、父母双方から矛盾した内容の意思が示されるような場合は、学校はそうした両者の意思を調整する場にはないため、父母が民法第817条の12の趣旨を踏まえ、子の利益の観点から適切に協議を行った上で、その結果を学校に伝えていただくことが望ましいと考えられます。
その上で、父母の一方が何らの理由なくそのような協議を拒んだり、学校行事から殊更に排除しようとしたりするような場合には、個別具体的な事情によりましては、父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価されることがありうると考えております。
そして、あくまで一般論としてお答えをいたしますと、父母の一方が父母相互の人格尊重義務や協力義務等に違反すると評価された場合には、親権者の指定変更の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性があると考えております。
この法務省の答弁を踏まえて質問をさせていただきます。

学校は父母の意思を調整する機能はないということで、同居親の言い分をそのままに採用する対応が望ましくなく、更に同居親が別居親との協議を拒む・一方的に排除しようとすることは親権者としての対応としても不適格であることが明確になりました。
そのため、藤沢市においては、学校現場では別居親を排除する対応は早急にやめ、また国会答弁の内容を踏まえ、同居親から別居親に学校行事の案内や子どもの成長を知らせる義務があると同居親に説明していくことで、市民憲章にある「明るい家庭をつくりましょう」に資する行政サービスに発展させて頂くようにお願いしたいのですが、ご見解をお聞かせください。

教育委員会といたしましては、そもそも学校は、様々な事情や背景がある中で、子どもと同居をしている親と、別居している親の意思を調整する場ではないとの見解でございますので、保護者には、子どもの気持ちを尊重し、子どものことを第一にお考えいただき対応していただく必要があるとの認識でございます。
なお、教員が担うべき授業や校務の負担にならない範囲においては、本市立学校に通う児童生徒の最善の利益を第一とした対応を心がけてまいりたいと考えております。
嘉田議員の発言です。
地方公務員法13条には、公務員は、全国民を平等に扱わなければならないとあります。これに違反した場合には、60条に規定される罰則規定に触れることさえ予想されます。具体的には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金というリスクを、教職員1人ひとりが負ってしまう。こんな目には遭ってほしくないというのが、私自身の現場を知る立場からでございます。
併せて、32条には、地方公務員は法令や上司の職務上の命令に従う義務があるとも定められております。教職員の方々は、公立の学校ですね、法律に則って業務をして、さらに上司の命令に従うとありますが、こういった行為は、教職員1人1人、個人個人に対しても罰則が適用されるリスクもあります。
ですから、別居親を排除するという教職員の差別行為については、例えば1年以下の懲役、50万円以下の罰金というリスクも伴っておりまして、その行為は上司が命令したことによるとも判断されかねません。
つまり、教育長や学校長、上に立つ皆様が別居親差別という脅威行為を教職員にさせるということと捉えられ、懲役のリスクを伴う指示をしていることにも繋がりかねません。
この発言からも、教職員の皆様及び学校長・教育長に至るまで、別居親差別に対して個人リスクを負っていると言及されていました。
そこで質問です。

別居親差別を行うことに対して訴訟による懲役のリスクがあることを知らずに日々のお仕事をするのではなく、様々なリスクを理解した上で職務を務めていただくことが、その方が責任をもって教員として従事するために必要なことだと思います。
市の教育委員会が主導して、藤沢市内の教職員に別居親対応に関するリスクの周知及び対応の改善をさせていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。

教育委員会といたしましては、子どもの権利条約の4つの原則に基づき対応することが大切であるとの認識でございます。
なお、判例等をふまえ、適切に対応してまいりたいと考えております。
ご回答いただきましてありがとうございました。
最後に、国会答弁の補足と、他市町村の好事例をお伝えしたいと思います。というのも、国会答弁において、質疑されておりました内容でとても重要な点であるためです。ぜひ藤沢市民が明るい家庭を築いていけるように、子育て推進施策として積極的にご採用頂けると幸いです。
まず、東京高裁の判決文によれば、親権を失った親も教育権があり、また親権は、非親権者が親として教育への関与を含めた子を養育監護する職分、つまり責任・義務ですが、非親権者の職分を否定するものではない、あるいは免除するものでもないということです。親権はもっぱら子の利益を図るためのものであり、子の利益に合致する非親権者の子に対する教育への関与を合理的な理由なく制限する権限ではありません。
その上で他市の好事例としては、富山県のある事例ですが、子どもが通う小学校のお便りプリント、保護者向けの行事案内等は父母双方に2通用意して同居親に渡し、同居親側から別居親に渡すように促されています。
もし同居親側から別居親に渡さない場合においては、学校から直接別居親に送付をされておりまして、発送等にかかるコストは別居親が負担をしているということです。
同じことが保育園でも運用されておりまして、役所の子育て課、保育園担当、子育て課と教育委員会、小学校とが連携して意識の共有を図るようにしているということです。これは富山県のある市の事例です。
また、愛知県のある市の事例ですが、親権を離婚で失った別居親が学校長、教頭に卒業式の参加交渉をしたところ、学校から「親なので当然子供の姿を見てほしい」ということで卒業式に参加ができたと。参加ができた別居親も本当に喜び、お子さんもお父さんが来てくれたと喜んでくれて、学校長・教頭も「別居親排除」という後ろめたさから解放されてとても気持ちよく行事を行えたとのことでした。
親権は別居親を排除できる権利ではなく、こどもが両親の養育監護にかかわらせていく責任者、つまり職分であると判決文で示されたことは非常に重い意味をもっています。
ぜひ、当市においても、親が離婚しても「ひとり親」ではなく「ふたり親」として、両親から愛情をもって健やかに育っていくためにも、とても大切な役割をもつ教育機関が率先して日々改善していくことをお祈り申し上げて、本日の私の一般質問を終わらせていただきます。
藤沢市議会議員:西川せいじ